「お前の『初めての夜』を……赤裸々に」
「ッ?!」
わなわなと震え上がっていた身体は彼の一言で凍りついた。
自分の口で『処女』だと明かしてしまったからには、既に手遅れ。
この悪魔の手から逃れる術は無いのかもしれない。
それに、コイツが言うと何もかもが本気に思えてくる。
この短時間で浴びせられた毒の数々。
底なし状態のコイツの脳には、もはや常識は通用しない。
一見、極上の男に見えるが、中身は最低最悪の毒吐き男だ。
最悪な状況を逃れるには、ただ1つ!!
私がコイツを落とすしか術はない。
やってやろうじゃないのッ!!
アンタが目尻を下げて、尻尾を振る日を見届けてやるんだから!!
沸々と湧き起こる闘志をギュッと握りしめ、すぐ目の前にいる彼を見据えると、
「携帯を出せ」
「は?」
「いいから出せ」
彼の言う通りにするのは癪だが、一先ず鞄から取り出した。
彼は私の手からスマホを取り、何やら入力し始めた。
そして、聞き慣れぬメロディーが彼のコートのポケット辺りから聞こえて来た。
恐らく、私の携帯から自分の携帯に掛けたのだろう。
「それ、プライベート用の番号だから他の奴に教えんなよ?」
返された自分の携帯を鞄にしまおうと視線を落とすと、再び柑橘系の香りが鼻腔を擽る。
気付いた時には彼の長い腕の中に囚われて……。
「小町からの熱烈なアプローチ、楽しみにしてるよ♪」
心まで鷲掴みしそうな艶声。
少し低めの声音に不本意ながらも胸が疼いた。
私の耳元に甘い余韻を残し、彼は片手を上げて颯爽とその場を後にした。



