「お前、臭い」

「へっ……?」

「そのバニラの匂い、何とかしろよ。甘ったるくて吐気がしてくる」

「ッ?!」


突然、彼が毒を吐き始めた。

言われた経理課の野口さんは、顔を真っ赤にして今にも泣きそうだ。


「それと、アンタ。豊満な胸がご自慢かしれないが、好きな女以外にこういう事されるのは正直言って気持ち悪いし、迷惑以外の何物でもないから。セクハラで訴えるぞ」

「なっ……!!」


巨乳をアピールしようと張り付いていた総務課の木村さんは、開いた口が塞がらないようだ。

見事にマヌケ面で彼を見上げている。


「そんで、最後はお宅。自分の顔がご自慢なんだろうけど、メイクに力を入れる時間があったら、髪も何とかしろよ。毛先がパサついて、老けて見えんぞ」

「うっ……」


あぁ~言っちゃったよ。

購買部の真鍋さんは、今年36歳になるベテラン事務員。

顏が童顔だからパッと見、若く見れるけど、肌が少し乾燥し気味だし、髪も潤い不足は否めない。


3人は彼の豹変ぶりに唖然としている。

そんな彼女らを掻き分けるようにして、私のもとへ来た彼は……。


「この指輪は“俺の女”って証だから。小町に変な言いがかり付けるような奴は、女だろうが許さねぇぞ」

「んッ!!」


彼はわざとらしく、彼女らに牽制する意味で私の肩を抱き寄せた。