2階に上がると、彼は既にお湯を沸かし始めていて……。
「あっ、私がやります!」
「………じゃあ、頼む」
「はい」
彼は戸棚からカップを取り出し、トレイの上に乗せた。
沸騰した湯をネルフィルターに通し、軽く絞ったそれを布巾に挟んで水気をしっかりと切る。
珈琲をそこへ投入し、スプーンで中央を窪ませると。
「手際がいいな」
「えっ?」
「いや、何でもない」
すぐ隣りで私の手元を見ていた彼は、所在なさげにソファへと。
私は彼好みの珈琲を淹れ、彼のもとへと向かった。
ダウンライトと間接照明だけでも十分過ぎる演出に、思わず感嘆の溜息が漏れる。
やっぱり、贅沢過ぎるよ……この夜景。
隣り合わせにソファに腰を下ろして、無言で夜景を眺めていると……。
「お待たせ~」
少し明るめな叔母様の声が響き渡った。
前回同様、ご主人様のお手も煩わせてしまって……。
「今日はトマトクリームにしてみたわ」
「ん」
「小町ちゃん、ゆっくりして行ってね~♪」
「あっ、はい。……有難うございます」
ご夫婦そろって素敵な笑顔。
あぁいう歳の取り方もいいもんだなぁ。
2人が去って行く後ろ姿を眺めていると、
「冷めるぞ」
「え?あ、はい」
エビとブロッコリーのトマトクリームのパスタとマセドアンサラダ。
それとオニオンスープと抹茶シフォンケーキがテーブルの上に。
見るからに食欲をそそるそれに、今にもお腹が反応の合図を出しそうだ。
「戴きますっ!」



