「連絡先は削除してないです。仕事に夢中で、連絡するのを忘れてました。………ごめんなさい」
「………来てくれたから、もういい。……十分だから」
少し震え気味の声。
安堵の溜息と共に優しく後頭部を撫でられた。
すると、スーッと長い髪を留めていたシュシュが絡め取られ、彼の指先が髪の表面から地肌へと。
その指先の優しい動きの心地良さに、思わず恍惚の表情が零れていた。
「とりあえず、食事でいいよな?」
「………はい」
彼は軽やかに車を発進させた。
「あの……」
「ん?」
「営業車じゃないんですね?」
「あっ、………あぁ。一旦、自宅に帰ったから」
「………そうですか」
もしかしたら、わざわざ自分の車を取りに行ったのかもしれない。
自惚れかもしれないけど、そう思えてならなかった。
車は市街地が一望出来る場所に停車した。
すっかり記憶されている夜景。
彼が好きだというそこは、既に私もお気に入りの場所へとなっていた。
「いらっしゃっ……大和じゃない」
「2階いい?」
「えぇ、いいけど。ご飯は?」
「2人分」
「はいはい、2人分ね」
「ご無沙汰しております。いつも急にすみません」
「いいのよ~別に。いつでも気兼ねなくいらっしゃいね~」
「お邪魔します」
彼の叔母様にご挨拶して、彼の後を追うように2階へと自宅スペースの階段を上った。



