社屋を出て、目の前の大通りを道伝いに暫く行くとバス停がある。
私は一心不乱にその場へと駆けていた。
そして―――――。
「あっ……」
バスの停留所を少し過ぎた路側帯に、見慣れた車がハザードランプを点灯させ停車している。
待っててくれたんだ。
もしかしたら、もういないかもしれないと思っていただけに、胸がキュッと締め付けられた。
逸る気持ちを抑えながら、駆け寄って……。
助手席のドアをノックする前に、サッと手櫛で前髪を整えて、必死に荒れる呼吸を整える。
猛ダッシュしたせいか、呼吸は落ち着きそうにはないが、これ以上彼を待たせる訳にはいかない。
私は意を決して、助手席の窓をノックした。
すると、ハンドルに項垂れるように頭を沈めていた彼がパッと私の方へ振り返り、視線がバチッと絡まった。
私は必死に笑顔を作り会釈する。
そんな私を確認して、彼は長い腕で器用に助手席のドアを開けてくれた。
「遅くなって、すみません」
謝罪の言葉を口にしながら乗り込むと、
「んッ?!」
「もう、……………来ないかと思った」
「っ………」
彼は掠れ気味の声で私の身体を抱きすくめた。
「ごめんなさい。急な仕事が入って……」
「メールでもしてくれれば良かったのに……。もしかして、連絡先………削除したのか?」
いつになく切羽詰った感じの声音に胸が軋んだ。
不安だったのは、私だけじゃないみたい。
きっと、彼も不安で仕方なかったんだ。
それほどまでに想われてる事に嬉しくて、胸の奥が熱く焦がれる。



