目の前の資料室の扉が開いた。
まだ社員証をかざしていないのだから、中から誰かが出て来る事になる。
相場は片手を上げ、隣りの配電室に入って行った。
そして――――――。
「………小町」
私の目の前には、私の胸を高鳴らせる人物が立っていた。
久しぶりに見た彼は、相変わらずカッコ良くて。
視線を逸らせないほど私の心が彼を求めていた。
逢いたくて、声が聴きたくて。
こんな風に私だけを見つめて欲しくて……。
嬉し過ぎて自然と視界が歪み始めると。
「んッ……」
彼の長い腕が私の腕を掴んで、資料室の中へ引き寄せた。
すると、静かに自動ドアが閉まってゆく。
うちの会社の資料室は殆ど廃屋倉庫と同じで、人気が無い。
売上データも顧客管理もほぼシステム化されており、法規上の問題で資料を保管してるだけの部屋。
だから、出入りする人間は限られている。
書類を管理している管理課とそれを必要とする人間くらい。
どうして、こんな場所に彼がいるのか分からない。
静寂に包まれた室内で、懐かしい爽やかな柑橘系の香りが鼻を掠めた。
この香りは、私の為の香りの筈なのに……。
彼の前から離れてしまったのだから、香りだって自分が好きなミント系にすればいいのに。
何でだろう……?
嬉しくて堪らない。
自惚れかもしれないけど、まだ……私の事を………?
「あ…………麻生さん」
勇気を出して彼の顔を見上げると、



