4月中旬。
桜もすっかり咲き誇って、肌を撫でる風も心地いい。
私は入社8年目を迎え、『お局様』に貫録を出し始めていた。
「先輩って、本当に救いようが無いですね」
「………ホントだね」
「何で、そんな直ぐに結果を求めるような事をしちゃったんですか?!」
「何でだろう……?」
「甘い言葉なんて、彼に期待する方が間違ってるのに……」
「ホント、その通り」
「もうっ!!………だけど、そんな無器用な先輩、好きですけどね」
「ありがと」
恒例の相談会開催中。
すっかり常連客の私達は奥座敷をぶん取り、日替わりランチを頬張っている。
あれから、彼から連絡はない。
勿論、私からもしていない。
社内ですれ違う事はあっても、元々会話すらない私達だったから、それは今も変わりない。
けれど、1つだけ違う事が存在する。
「これから、どうするつもりですか?」
「どうするって、どうするもこうするも無いよ?頑張って、忘れないと」
「忘れられるんですか?………もっと好きになってるのに」
「っ……」
そうなのだ。
私は彼と別れて、益々好きになっている。
傍にいた時には見えなかった部分が、別れてから見えるようになっていた。
更衣室で着替えをしていた時。
「昨日応援手伝いで角川店に行ったんだけど、本部に戻る予定の麻生さんに“乗せてって”って頼んだら『彼女以外乗せない主義なんで』だって!!カッコイイよねぇ~♪」
「彼の車の助手席に乗る女って、どんな女だろうね~?」
同僚の子達の会話に、胸が締め付けられた。



