これが、彼の答えなのかもしれない。
即答出来るほどに『好き』でなければ、『愛おしい』と思える存在でも無い。
私なら『好きか?』と問われれば、瞬時に『大好き』と答えれるのに。
顔を背けたままの彼。
そんな彼に背を向け、私は自分の鞄を取りに寝室へ向かった。
そして、リビングに戻って来た私は彼の目の前に――――。
「これ、お返しします」
「ッ!!こっ、小町ッ!!」
「離してっ……」
「小町……」
「離して………下さい」
「っ……」
リビングテーブルの上に合鍵を置いた。
そんな私の腕を彼は掴んでくれたけど、肝心な言葉は言って貰えない。
たった一言、『好きだ』と言うだけなのに。
彼も私と同じで結婚適齢期。
しかも、働き盛りの男性だ。
考える事は沢山あるだろう。
だけど、それでも………私を選んで欲しかった。
顏ヨシ、声ヨシ、見た目ヨシ。
更に仕事も出来て、高給取り。
そんな彼に“将来”を望む方が間違いなのかもしれない。
同僚の女子達みたいに、一夜限りの関係を望むだなんて……私には出来ない。
だからこそ、私には選択肢が限らている。
必要として貰えないのなら、答えは1つ。
そっと彼の手を自分の腕から離して……。
「お邪魔しました」
彼との楽しかった日々を思い出し、笑顔を取り繕って。
最後の挨拶を口にしたというのに、それ以上止めようともせず、彼は私をじっと見据えていた。
締め付けられる想いを堪え、私は彼の部屋を後にした。



