彼のアパートの外階段を上る女性の姿が。
同じアパートの住人さんを見たのは初めて。
ちょっぴり嬉しいような恥ずかしいような複雑な心境。
だってもしかしたら、これから先に何度か顔を合わせるかもしれないしね。
私は頬を綻ばせながら階段口に差し掛かった。
すると―――――。
私より少し先を歩いている彼女から、爽やかな香りが仄かに漂って来た。
それが鼻腔を掠めた時、私の左胸はズキンと嫌な音を立てた。
―――――仄かに香る爽やかな柑橘系
すっかり記憶されている彼の香りと全く同じ香りを纏った女性。
市販で売られているような柑橘系の香りでなく、ちょっと独特な香りだから、脳が警告音を発した。
しかも、向かう先が同じ方向というのが、更に不安感を煽る。
一気に心臓が悲鳴を上げ始めた。
異常に早まる鼓動のせいで、両手が震え始める。
ゆっくりと階段を上る彼女に合わせるように、自然とゆっくりと階段を上る。
まるで、私が彼女を尾行しているかのように。
そして、私の嫌な予感は的中した。
彼女は3階の最奥にある彼の部屋の前で立ち止まった。
そして、鞄から鍵を取り出し、柔和な表情でドアを開けた。
「っ……」
私にくれたように、彼女にも合鍵を渡しているのね。
しかも、私の視線はそんな鍵よりも彼女自身に釘付けになっていた。
少し大きめのコートを羽織っている彼女は、片手でドアノブを握り、もう片方の手を愛おしそうに当てている。
―――――ふっくらとしたお腹に



