きつく抱き締められる腕の中で、漸く落ち着き始めた私。
拒絶されるでもなく、無視されるでもなく。
こうして、私の気持ちを受け入れて貰えた事への安堵感。
私の胸元にあった片方の手がゆっくりと私の背中へ回り、更にギュッと抱き締められた。
そんな1つ1つの行動が嬉しくて、勇気を出して彼の背中に腕を回した。
すると、
「小町」
「………はい」
「俺の負けだ」
「へ?」
「フッ。ってか、最初から俺に勝ち目はないんだけどな」
「えっ?」
最初から勝ち目がないって?
緩やかに解かれた腕の隙間から彼の顔を見上げると、はにかんだ彼がいた。
しかも、この上なく穏やかな表情の彼が。
「3年前に食品部門に移動して来てすぐに、俺は小町に一目惚れした」
「はっ?!」
「だから、賭けなんて最初から存在してない」
「………えっ………どういう事?」
ちょっと、待って。
3年前って、私が主任になる前じゃない。
って事は、紺野部長が言ってたように、麻生さんが私を………?
「えっと、あの……」
「ん?」
「私を主任に推薦して下さったのは、私の仕事ぶりで推薦してくれたんじゃなくて、ただ単に好意で推薦したんですか?」
「はっ?……何でその話を知ってんだ?………あっ!!紺野部長か?!」
「…………はい」
「ッ!………ったく、……はぁ~……」
「で、………どうなんですか?」
私は真剣な眼差しで彼を見据えた。



