「とりあえず、中に入れ」
「あっ、はい。………お邪魔します」
彼から入室許可を頂き、玄関に入った。
すると、記憶されてる部屋の感じと違う事に気付き、無意識に眉間にしわが寄る。
彼の後を追い、リビングに着くと……。
―――やっぱり!!
テーブルの上に大量のお酒の空き缶や空き瓶がある。
部屋の異変はこのアルコール臭だった。
以前来た時は、爽やかな柑橘系の香りを漂わせていた筈なのに、今は完全にお酒の匂いしかしない。
「適当に座って」
「…………はい」
彼は冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出し、喉を鳴らしながら飲んでいる。
もしかすると、酔いを醒まそうとしてくれてるのかな?
私はソファの端に腰を下ろし、テーブルの上のゴミを片付け始めると。
「それは俺が後でするから放っておけ」
「…………はい」
伸ばした手を巻き戻すように膝元に置く。
言いたい事は山ほどあるのに、今は言える空気じゃない。
どうしたら、彼に伝えられるだろうか?
じっと手元に視線を落としていると、
「何か、飲むか?」
「あっ、いえ……大丈夫です」
「あっそ」
彼はペットボトルを手にしてソファに腰を下ろした。
けれど、お互いに気を遣ってか………言葉が出て来ない。
無言のまま、数分が経過した。
私は両手をギュッと握りしめ、意を決した。
「あのっ……」
「………何?」
「その………こんな時間にすみません」
「…………フッ、それ、さっき聞いた」
「ッ?!…………そうですよね」
漸く私の知っている彼の顔になった。



