抱き締める腕を解いて、ボタンを留める。
その間にも彼の視線が降り注いでいるかと思うだけで、胸が高鳴る。
私だけを見て欲しいと思う反面、見つめられたらどうしていいのか解らない。
それほどまでに彼の瞳は魅力的で吸い込まれそうになる。
彼の瞳を見つめる自信がなくて、お礼の言葉も投げやりに、彼の前から逃げてしまった。
自分の気持ちに正直になった結果、今までのように見つめる事も難しくなってしまった。
はあぁ……。
私、何やってんだか。
気持ち的にはスッキリしたけど、それ以上に悩みは増えてしまった。
私、どうしたらいいの?
好きだと自覚してしまったからには、彼に告げるべき?
でも、そんな直ぐには気持ちの整理がつかない。
例え、好きだと自覚しても、あの行為をするのは話が別だ。
ホント、どうしよう~~!!
結局、お礼のメールも出来ぬまま一夜が明け、ボーっとしたまま会社へと向かった。
お昼を少し回った頃、会社の階段口に差し掛かった。
すると、突如背後から美声が聞こえて来た。
「今出勤か?」
「あっ、お、おはようございます。はい、今からです」
どうしよう、昨日の事に触れるべき?
それとも、ここは会社だからスルーするべきなの?
そんな些細な事にも気が動転して、またもや彼の前から立ち去ってしまった。
きっと、変に思われたに違いない。
あぁ、どうして素直になれないかなぁ。
自分の性格が恨めしい。



