セーター越しに伝わる彼の鼓動。
思ってたよりも速くて、聴いてる私の方がドキドキする。
ううん、違う。
ドキドキしてるのは、彼の心音を聴いたからじゃない。
………もう解ってしまった。
私は――――――彼が、好きなんだ。
今では黒歴史になりつつある7年前の恋人。
当時は凄く好きでこうして抱きついたりした事もあった。
だけど、違うの。
何が違うって、ドキドキの感じが全然違う。
きっとあの当時は、恋する事に恋をしていたんだ。
彼がどんな人なのか、どこに住んでるのか、どんな仕事をしているのか。
そんな彼自身のパーソナリティーを全く知らないのに、好きだと決めつけていた。
彼から求められる事で好きだと思い込み、自分の心に気付かぬフリをしてたのかもしれない。
今こうして麻生さんを抱き締めて、彼自身を真っ直ぐ見つめて自分の心に問いかけた。
――――私の答えは、彼の事を全て知りたいという正直な気持ち。
上辺だけでなく、彼自身の全てを知りたいと思ってしまった。
毒を吐かれても、嫌味を言われても、素っ気ない態度を取られても。
彼が私を『早坂小町』として見てくれるなら、私も彼を『麻生大和』として見続けたい。
イケメンだからとか、美声だからとか、高給取りだとかそんな事は抜きにして。
私は1人の男性として、彼をもっと知りたいと思ってしまった。
そしてそれと同時に、今まで味わった事の無いほど胸が熱く疼いている。



