彼の新たな一面を垣間見た気がして、ちょっぴり心がほっこりとした。
2人して車から降りると、何とも言えない空気が漂う。
だって、今まで1度もこんな風に見送ってくれた事なんて無い。
だから、何て言っていいのかも分からず、視線が泳ぐ。
すると、
「今日は特別だ」
「へ?」
「最後に1つだけ、小町の願い事を聞いてやる」
「えっ?」
「何でもいいぞ?言ってみろ」
とても優しい表情をした彼が街灯に照らされた。
もしかしなくても、誕生日だからだよね?
口元をキュッと結び、腕組みをしている姿も様になる。
性格はちょっと難有りだけど、彼の真意を知ってしまえば気にも留めない。
だってそれは、照れ隠しなのだと知ってしまったから……。
「本当に何でもいいんですか?」
ダメもとで尋ねてみると、意外にもあっさりOKを貰えた。
きっと、彼が想像している事とは大きくかけ離れているだろうけど、こんなチャンス滅多にない。
いや、最初で最後かもしれない。
私は今の自分の気持ちを確かめる為に、フリータイム1分を貰った。
彼に目を閉じて貰い、組んでた腕まで解いて貰って……。
ここで勇気を出さなかったら、絶対後悔すると思う。
ありったけの勇気を振り絞って―――――。
彼のコートのボタンを外して、緊張のあまり震える指先でコートの襟部分を広げた。
そして、自分の心に素直に問い掛けながら彼に抱きついた。



