でも、今日の彼はいつもと違う気がした。
だって、今の今まで毒を1つも吐いてない。
私の恰好にしても、言動にしても……。
明日は槍でも降って来るんじゃないかと思うくらい。
もしかして、今日はとてつもなく機嫌がいいのかしら?
あらゆる言葉が脳内を駆け巡る。
だって、何を言ったって彼の反逆に遭うだけだもの。
だけど、今日ばかりは………大丈夫な気がする。
理由は分からないけど、何となくそんな気がした。
彼が纏う雰囲気がそう思わせたのか。
誕生日に1人で過ごすのではなく、素敵な時間を過ごせたからなのか。
とにかく、今日の彼には素直になっても嫌味を言われたりしない気がした。
「実は、今日は私の誕生日だったんです。この歳になると、別に何かをしたいとか無かったんですが、やっぱり1人で過ごすのはちょっと寂しいなぁって思ってたので、こうして楽しく過ごせて凄く嬉しかったです。ありがとうございました」
言い終えた私は新たな境地を開拓した気がした。
30歳という年齢がそう思わせるのか。
素直に自分自身と向き合って行動したからなのか。
自然と柔らかい表情になってゆくのが自分でも分かった。
すると、彼は私の言葉が本心かどうかを尋ねて来た。
今の私に嘘を吐く理由が思い当らない。
志帆ちゃんの言う通り、無理して頑張らなくてもいいんだ。
見栄を張ろうとするから、歪が生まれる。
その歪があるうちは、決して心を開いて貰えない。
心穏やかに彼を見据えると、



