寒いのは俺じゃない。
コートの裾から伸びる彼女の脚が寒そうに思えてならない。
俺の我が儘なのに、彼女に寒い思いをさせるかと思うと胸が痛む。
「決まったか?」
「…………はい」
「ん…………言ってみろ」
俺は腕組みをしたまま彼女を見据えていると……。
「1分」
「え?」
「1分、私に下さい」
「…………どういう意味?」
彼女の言いたい事が分からない。
1分間は、殴る蹴るに堪えたら良いのか?
それとも、俺みたいに罵声を浴びせたいとか?
全く以て、意図する事が分からず、彼女の言葉を待っていると。
「今から私が麻生さんに何をしても、目を瞑ってじっとしてて下さい」
「…………じっとしてればいいのか?」
「はい。目を瞑って、1分間は何もせず、じっとしてて下さい」
「…………分かった。好きにしろ」
彼女がしたい事がいまいちよく分からないが、したい事があるならそれに越した事は無い。
“して欲しい事なんて無い”と言われるより数十倍マシだ。
「ん、これでいいか?」
俺は目を閉じてじっと身構えた。
すると、
「あの、腕は解いて貰えますか?」
「ん?………こうか?」
「あっ、はい」
組んでいた腕を解き、軽く手を握った状態で自然と下ろすと……。
「じゃあ、今から始めるので、じっとしてて下さいね?」
「ん」
「それから、絶対に目を開けちゃダメですよ?」
「ん。………早くしろ」
何をされるのか分からず、心臓が暴れ出す。
ゴクリと生唾を飲み込むと――――――。



