「29も30も、俺にとったら大して意味は無い。毎日を一生懸命生きてれば、嫌でも歳を取る。中身の無い29より、充実した30なら、それでいいんじゃねぇーの?」
「…………そうですね。麻生さんの言う通りです」
切なそうな表情から、ほんの少し瞳に輝きが戻った気がした。
俺はルームランプを消して車を降りると、彼女も荷物を持って車を降りた。
いつもなら運転席から手を振る程度の俺だが、今日ばかりは彼女を見送ろうと思った。
助手席側に回り込んだ俺を見て、ほんの少し動揺している彼女。
途端に視線を泳がし始めた。
「今日は特別だ」
「へ?」
「最後に1つだけ、小町の願い事を聞いてやる」
「えっ?」
「何でもいいぞ?言ってみろ」
本当は彼女が欲しい物やして欲しい事が分からず、自分本位でプレゼントを決めてしまった。
だから、俺にして欲しい事があれば何でもして遣りたいと思っただけ。
まぁ、俺にして欲しい事なんてないだろうけど。
俺は腕組みをしてじっと見据えていると、
「本当に何でもいいんですか?」
「あぁ、グーで殴るなら顔以外にしてくれ。一応、お客様の前に立つ事が多いからな。それに、蹴りを入れるなら、せめて急所は外せよな?運転して帰らないとならないし……」
「フフッ、何ですか?それ……」
「いや、俺マジだけど」
正直、彼女の望む事なんてサッパリ思いつかない。
今までの暴言の数々や強引な行動を考えたら有り得る話だ。
何もかも覚悟の上。
それくらい腹をくくって、彼女の本心が知りたいと思った。
「寒いから早くしろ」
「えっ、あっ、はい」



