シフトをパーキングに入れ、ヘッドライトを落とすと。
彼女は膝の上で抱えていた鞄を肩に掛けた。
そして、ゆっくりと俺の方に振り返り……。
「あのっ……今日はありがとうございました。お忙しいのに付き合って下さって、嬉しかったです」
「いや、たまには息抜きも必要だしな」
「えっ?………ホントに息抜きになりましたか?」
「………あぁ、なったよ」
俺の言葉が意外だったのか、ちょっと驚いた表情を浮かべた彼女。
そんな彼女の頭をポンポンと撫で、ほんの少し笑顔を向けた。
すると、はにかんだように俯いてしまった。
お互いに掛ける言葉が見つからず、車内に静けさが漂う。
すると、俯いたままで彼女がポツリポツリと言葉を漏らし始めた。
「実は、今日は私の誕生日だったんです。この歳になると、別に何かをしたいとか無かったんですが、やっぱり1人で過ごすのはちょっと寂しいなぁって思ってたので、こうして楽しく過ごせて凄く嬉しかったです。ありがとうございました」
彼女は言い終えると顔をパッと上げ、スッキリとした顔で笑みを浮かべた。
「それ、………本心?」
「へっ?………はい、本心です。麻生さんに嘘を吐く必要性がありませんから」
俺の瞳を真っ直ぐ見据え、彼女はキッパリと言い切った。
そんな彼女から視線を逸らし、時間を確認すると、23時51分。
――――――まだ、間に合う。
俺はコートのポケットに手を突っ込み、小さな小箱を取り出した。



