彼女がどんな表情なのか、分からない。
薄暗いというのもあるが、直視する勇気が無いというのが正しい。
「あ、あの……」
俺は彼女の言葉を無視して自分の椅子に深く座り直し、腕組みをした。
「寝るから、終わったら起こして」
「…………はい」
俺は彼女の反応を見る事無く、目を瞑った。
これでいい。
これくらいなら、変に気負う事もないだろう。
俺は寝入り体勢を整えると……。
―――ッ?!
えっ、ちょっ………これって、何?
組んでる腕の隙間から出ている俺の指先が、ちょこんと掴まれた。
必死に平静を装って目を開け、視線をそこへ落とすと。
「眠たくないのに……」
彼女の言葉にハッとする。
ヤバッ、指先が冷たいからバレてしまったようだ。
必死に脳内で打開策を考えるも、名案なんて浮かぶ訳もなく……。
「じゃあ、俺が寝れるように握っとけ」
指先を掴んでいる彼女の手を握り返し、彼女の膝の上に腕を放り投げた。
自分で言っておきながら、何ともカッコ悪い状況に後悔の溜息しか出て来ない。
なのに―――――。
「はい」
彼女は優しい声音でそう呟き、握りしめた手先を膝上のコートの下に滑り込ませた。
必然的に彼女の脚の上に置かれる形となった俺の手。
勿論彼女の手もあるのだが、ダイレクトに彼女の体温が伝わってくる。
ちょっ……マジで勘弁してよ。
何コレ、拷問?
こんな状況で眠れる男がいたら、是非とも紹介して貰いたい。
手に汗握る状況って、まさしく今だろ。
俺は必死に理性と闘いながら、地獄のような天国のような時間を過ごした。



