嬉しそうにメニューに目を通す彼女。
誕生日のケーキがティラミスでいいんだろうか?
事前にバースデーケーキを頼んでおく事くらい容易いが、俺がそこまでしたら絶対に引かれてしまいそうで怖い。
彼女との距離は少しずつ縮めるに限るだろう。
一気に詰め寄ると、逃げてしまいそうだ。
上機嫌で食事を終えた俺らは、隣りの映画館へと移動した。
映画は王道のラブストーリーにほんの少しコメディータッチが効いている作品。
人気絶頂の若手俳優が数名出ていて、結構館内は人で溢れていた。
「何か、要るか?」
「ん~、お腹はいっぱいだから、飲み物だけで」
「だな」
俺らは飲み物だけ購入し、席に着いた。
すると―――。
「麻生さん」
「ん?」
「私、寝てても文句はいいませんから」
「フッ、サンキュ」
俺が仕事で疲れていると踏んで掛けた言葉だろう。
無理に付き合わせたと思い込んでいる彼女の気遣いに胸が温かくなる。
上演開始10分程が経った頃。
無性に足元がスースーして、思わず隣りにいる彼女に意識が集中する。
コートを脱いで膝に掛けている彼女。
見るからに薄着で風邪を引いてしまうんじゃないだろうかと心配になる。
俺は彼女の耳元に近づき……。
「小町、コートを着てろ」
「え?」
「いいから、着てろ」
俺の言葉に渋々コートを羽織った彼女。
そんな彼女の膝元に自分のコートをそっと掛けた。



