「これ」
「ん?」
私は、鍵を握りしめたままの手を彼に突きつけるように真っ直ぐ伸ばした。
「麻生さんの家の鍵を無くして、ごめんなさい」
「いや、それはもういいけど」
「お詫びにと言ったら可笑しいかもしれませんが、よかったらどうぞ」
「えっ、何?」
私の行動に応えるように、私の手の下に手のひらを差し出す彼。
そんな彼の手のひらにそっと乗せた。
未だかつてないほどに心臓が暴れている。
突き返されたらどうしよう。
そんな事、考えてもいなかった。
今さらだけど、どうしたらいいのか分からない。
思わず、彼の瞳をじっと見据えると。
ッ?!
えっ、今………はにかんだ?
もしかして、照れてるの??
顔を背けた彼だが、ほんの一瞬はにかんだ気がした。
いつも志帆ちゃんが見せるような、嬉し困る表情だった……よね?
えっ、何、その反応。
こっちまで照れるんだけど……。
「お前、ホント性悪女だな」
「えっ、何でですかっ?!」
「マジでムカつく」
「ちょっと、それは言いがかりでッんっ」
反論する言葉さえも遮られてしまった。
長い腕がスッと現れたと思った次の瞬間には、私の唇は彼の唇で塞がれていた。
かなり強引だと感じた口づけも最初だけで、次第に蕩けるような甘い痺れをもたらし始めた。
久々のキス。
胸の鼓動も相まって、彼から与えられる甘美な誘惑に呑まれてゆく。



