何故だかは分からない。
だけど、彼と会場を後にした事は事実のようだ。
唖然としている私は、彼に肩を抱かれたまま店を後にし、大通りへと歩かされている。
痺れるような冷たい風も今なら気にならないほど、彼と密着してる部分が熱を持つ。
無意識に足の長い彼に合わせようと必死で歩いていると、不意に身体がバランスを崩した。
思わず転びそうになり膝を屈めると、
「助かったよ、サンキュ」
「へ?」
私から離れた彼は、パンパンとコートを叩き始めた。
まるで、私が触れていた部分が汚れたとでもいうように……。
そんな彼を呆然と眺めていると、
「女って、よくもまぁあんなにも次から次へと話が出るもんだな」
「…………え?」
「さっきの女、何て言ったっけ?………経理課の………」
彼は思い出そうと眉根を寄せた。
「………宮内さんですか?」
「あっ、そうそう!!宮内」
数分前までの紳士な彼の面影は微塵もなく、さん付けすらしていない彼はもはや別人のよう。
「アイツ、選挙カーみたいだったよな」
「はい?」
「自分の事を必死にアピールしようと、次から次へと……。俺、あーいう女、大金積まれても無理だわ~」
「………」
今、私の目の前にいる彼が、本当の彼なのかもしれない。
もしかしたら、理想が高いとか、女性嫌いなのかな……?なんて美化した彼を考えていると。



