視線の先に捉えた1軒の店。
看板には『ランパブ・ミルキー』と記されている。
「怪しげって?寒さ凌ぎにはなるだろ?」
「……いえ。あの店に入るくらいなら、寒い方がマシです」
「寒い方がマシって……。フフッ、余程の店なんだな」
「………はい。女の私が入店したら、お客じゃなくてスタッフにされそうです」
「あぁ~なるほどな、解った。じゃあ、なるべく人通りの多い所にいろ。人気の少ない所だと、時間的にも危険だから」
「………はい」
彼の言葉から優しさが滲み出ている。
毒を吐かれる事を覚悟していたのに、彼からは毒の気配さえ感じられない。
それほどまでに、私の声は弱々しいのだろうか。
その後も私を安心させようとなのか、私が大通りを目指して歩いている間も、Bluetoothで会話してくれた。
すると、
「小町、ごめんな。高速に入るから、電話切るな?」
「あっ、はい」
「直ぐ迎えに行くから、鼻唄でも歌ってろ」
「フフッ。………はい、鼻唄歌って待ってます」
「おぅ」
「麻生さん」
「ん?」
「運転、気を付けて下さいね」
「………ありがとな。じゃあ……」
彼の声音は、今迄で一番優しい声だった。
再び一人ぼっちになってしまった私。
だけど、不思議にも淋しくない。
彼がここへ向かってくれているというだけで、不安が安心に変っていた。



