数分前まで私が座っていた場所には、沢山の女子社員が集結していた。
勿論、皆のお目当ては麻生さん。
ダークグレーのスーツ姿が妙に艶気を出している。
少し骨ばった長い指でグラスを持ち、女子社員が次々とお酌するのを嫌な顏一つせず受けていた。
「麻生さんって、1人暮らしですか~?」
「あぁ、今は1人だけど」
「えっ、今はって、それって意味深!もしかして、彼女と同棲してたんですか~?」
「さぁ~どうだろうねぇ~?」
経理課の子が擦り寄るようにグイグイ迫っている。
そんな彼女を突き放すでもなく、彼は終始笑顔でビールを口にしていた。
どうしよう?
座る場所が無いし、あの輪の中に入る勇気も無い。
彼女達ほど、彼と話がしたい訳でもない。
目の前にたまたまチャンスが訪れたから、ちょっとだけ話がしたいなぁと思っただけだ。
彼女達と同じように振る舞うつもりは毛頭ない。
そこまでして恋愛したいとも思わないし。
再び私は帰ろうと思い、彼女達の後ろに置いたコートを取ろうとそっと手を伸ばすと。
「おっ、やっと戻って来たな?」
「ッ?!」
伸ばした私の腕を物凄い勢いでガシッと掴み、爽やかな笑顔を向ける人。
……麻生さん。
私は彼に腕を掴まれ、中腰のまま硬直していると、



