四百年の恋

 ……帰り道。


 行きは燃え上がる恋心に浮かれていた美月姫だったけど、夕暮れの海岸での突然の別れ。


 その衝撃からか、ほとんど無言のまま車に揺られていた。


 当然圭介に対しては、未練がある。


 真実の恋から目を背けるなと言われても、今すぐ何をすればいいのか分からない。


 途方に暮れたまま、言葉もなく打ちひしがれていた。


 すでに辺りは真っ暗になっていた。


 東の空には、高度を増しつつある明るい月。


 しばらくひと気のない道が続く。


 月の明り以外は、所々の街灯と反射板の光のみ。


 そして時折、ラブホテルの看板のネオンが暗闇から視界に飛び込んで来る。


 助手席の美月姫は黙って窓の外の流れる風景を眺めていたのだが、ネオンを目にするたびに恥ずかしそうに目を伏せる。


 今すぐウィンカーを出して、ネオンの方角に曲がれば……。


 今でも圭介は、そんなことをふと考える。


 でもできない。


 (もう、ピリオドを打ったのだから)


 生まれる前に犯した罪。


 前世において、愛しながらも不幸にしてしまった女。


 その女が生まれ変わって、今助手席に座っている。


 心細そうな面持ちで。


 今度こそ幸せにしてやらなければならない。


 ……それが贖罪。


 たとえ自分のそばに置いておけない運命だとしても。


 忘れえぬ思いを抱えながら、ここから一人歩き出さなければならない。


 立ち止まることはできなかった。


 圭介は無言のまま、アクセルを強く踏み込んだ。