四百年の恋

 太陽が水平線に沈むと同時に、圭介は美月姫からゆっくりと離れた。


 最後にその愛しい顔を、じっくり眺めた。


 相変わらず真姫に似ている。


 だがキスの間、真姫のことを思い出さずにいられた。


 美月姫という一人の女性として接し、そしてキスをした。


 もはや彼女は真姫の身代わりなどではなく、大村美月姫という一人の女性として、圭介の前に存在していた。


 だが……。


 今はまさに、別れの時。


 絶え間なく続く波音さえも、限りあるものに感じられる。


 時間は確実に過ぎていく。


 いつしか潮が満ちてきたようで、波打ち際が先ほどより二人に近づいている。


 美月姫が砂浜に書いた、「MITSUKI & 先生」という二人の名前。


 打ち寄せた波が、静かにその形跡を消し去っていった……。


 (これが、二人の運命)


 波にかき消された、砂浜に書かれた二人の名前。


 その様を目にした二人は、十分に悟ることができた。


 夕日は水平線の下に隠れ、辺りは夕闇が濃くなってきた。


 東の空には満月直前の丸い月が姿を見せていた。


 「そろそろ戻ろうか」


 圭介は駐車場へ向かって歩き始めた。


 美月姫も黙って後に続いた。


 風が止み、静けさと夕闇に包まれた浜辺。


 潮が満ちてきて、波打ち際が先刻より手前に移動している。


 夕暮れの海辺には波音しか響いて来なかった。


 柔らかな月明かりが二人の道標となっていた。