四百年の恋

 圭介は戸惑っていた。


 柔らかい唇に重ねてみたい衝動と。


 互いに歯止めが利かなくなることに対する恐れ。


 (本当に、これっきりになんてできるのだろうか)


 現世で別の人生を送っている自分が、新たな幸せを築きたいと願う思いと。


 前世、福山冬雅だった時代から延々と続いている贖罪の念が交錯していた。


 「お願いです。一度だけ……」


 一度だけ。


 今までの思い出のピリオドとして。


 太陽が水平線に触れた瞬間。


 二人は唇を重ねた。


 離れるのが惜しくて息ができない。


 離れられなくなるので、深くは求められない。


 そんなジレンマの中、二人は唇を重ね続けた。


 背中に腕を回し、そっと抱きしめながら。


 最初で最後の悲しいキス。


 記憶に刻み付けるかのように、求め合い続ける。


 ……唇が離れた時、圭介は美月姫の瞳を見た。


 潤んだ瞳の笑顔。


 赤く染まった頬。


 それがこの上なく愛おしくて、再度腕の中に強く美月姫を抱きしめた。


 遠い昔の思い出のようで、懐かしさが込み上げてくる。


 これもきっと、前世からの運命。


 福山冬雅の月光姫への愛もまた、真実であったはず……。