四百年の恋

 「キス?」


 圭介は反応に困った。


 「最初で最後です。今までの思い出の終止符の代わりに」


 「だからって、」


 「私……、キスまだなんです」


 圭介が反論する間もなく、美月姫は訴えかけた。


 「キスなしの初体験だったんですよね……。だから私、未だに複雑な思いから逃れられないのです」


 愛情表現と称して女を抱く際の、偽りのキス。


 女の扱いに慣れている男なら、当たり前のことのようにできるだろう。


 だがそれすらなかった、真夏の夜の初体験。


 その時の優雅が何を思っていたか、圭介には正確には分からないが……。


 「キスは……。本当に好きな奴とするべきじゃないのかな」


 ようやく圭介は美月姫に答えた。


 「私が吉野さんを好きな想いに、嘘偽りはありません」


 美月姫はきっぱりと述べた。


 「清水くんのことを忘れるために依存していったのは、事実ですが……。自分の寂しさばかり押し付けて、吉野さんの気持ちを全然考えていなかったのに気づきました」


 そして続ける。


 「だからもう……わがままは言いません。でも今までの日々の区切りに、キスしてほしいのです」


 美月姫は圭介の目を、潤んだ瞳でじっと見つめながら懇願した。