四百年の恋

 「瞬間的に全ての困難を乗り越えてもいいと思えるほど、お前のことを愛していたんじゃないかな」


 「でも清水くんは、結局私を置き去りに」


 「断腸の思い、後ろ髪を引かれるようにつらかったから、あの夜謝恩会をすっぽかして、逃げるように東京に旅立ったのだろう。お前の顔を見てしまえば、決意が揺らぐと危惧して」


 「もしも吉野さんの言う通りに、清水くんが私のことを愛してくれていたとしたら。私も一緒に連れて行ってほしかったです」


 「何もかも犠牲にして、か?」


 「!」


 美月姫は、優雅と共に生きた時のことを想像してみた。


 自分以上に、優雅は失うものが多すぎる。


 今まで育ててくれた、母親からの期待。


 後継者にと望む、父親からの願い。


 約束された将来。


 家柄のある令嬢との結婚……。


 愛を貫くことによって、優雅が失くしてしまうものはあまりにも多すぎる。


 「あいつがお前を愛していたのは、疑いようのない事実だ。一度は周囲のことを考えるあまり、重荷に耐えかねてあいつは逃げ出したけれど、今後もしかしたら状況に変化が生じるかもしれない」


 「変化って……?」


 「例えば、丸山乱雪の跡を継がなくてもよくなるとか。政略結婚の話がなくなるとか」