四百年の恋

 「……」


 迷った挙句、圭介はためらった。


 静香や真姫の懇願を聞き入れたわけではない。


 このまま抱き返して、身も心もこの腕の中に閉じ込めてしまいたいと願うのだけど。


 どこかにためらいがある。


 職業倫理?


 それとも罪悪感?


 「先生、私を包み込んで暖めてください」


 温もりをせがむ。


 こんなにも愛しいと感じているのに、応えることができない。


 夜風に緩やかに揺れる、美月姫の長い髪を撫でた。


 それだけがやっとだった。


 「……そろそろ帰ろうか」


 帰宅を促して、美月姫を車に連れ戻すのが、いつも一苦労。


 帰りたくないとその瞳が訴えている。


 「ずっと先生と一緒にいたい。あと一ヶ月で札幌に帰らなきゃならないのも、疎ましいくらいです」


 「そうだな……」


 「でもその前に、旅行楽しみです。それまでにもあちこち連れて行ってください」


 「今週末、日曜日はオフだから。……海でも行くか?」


 「はい!」


 次の約束を提示すれば、ようやく美月姫は安心して、帰宅の準備を始めてくれる。