四百年の恋

 同僚が美月姫に言及し始めて、圭介の緊張感は高まる。


 「ええ……。帰省中暇だとか言って、何度か」


 圭介は素知らぬ表情を演じた。


 「偶然見かけた先生が驚いてらっしゃいましたよ。彼女、綺麗になったと」


 「札幌はここより都会だから、垢抜けたんじゃないですかね」


 「在学中は真面目そのもの。堅物って感じでしたけどね」


 「優等生でしたからね」


 あくまで客観性を装う。


 「だけど吉野先生、本当に気をつけたほうがいいですよ」


 「何をですか?」


 「ちょっと、親しく接しすぎかと」


 また来たか。


 圭介は身構えた。


 周囲に初芝静香がいないのを確かめて、内心安堵している。


 「……彼女は受験に失敗しました。私の指導力不足に起因するとはいえ、彼女もかなり落ち込んでいましたので。卒業後のアフターケアも担任だった者としての重要な務めですから」


 万が一の場合を想定して準備しておいた台詞を、圭介は滑らかに口にした。


 「細やかな指導方針には、感服いたしますが」


 同僚が圭介に忠告した。


 「女子生徒は知らない間に、こちらが想像しないスピードで成長します。まだ子供だと思っていても、いつの間にか女になっているのです」


 同僚は力説する。


 「子供だと思って接すると反抗するし、女として接すれば、向こうもこちらを異性として認識し出すこともあります」


 圭介は笑ってごまかそうとしたが、


 「吉野先生は独身ですから、ほんと気をつけないとまずいですよ」


 念を押された。