四百年の恋

 「……いつも何かを気にしていなきゃならないですね。周囲の目や家族のこと、そして法律」


 帰宅にはしぶしぶ応じたものの、歩みが遅い。


 居酒屋から美月姫の家までは、歩いて15分くらい。


 夜道を一人で帰すわけにはいかないので、家まで送り届けているところだった。


 夏の終わりの並木道。


 吹き抜ける夜風がとても心地よい。


 「先、生」


 後をついてきた美月姫は圭介の横に並び、そしてまた腕を組んでくる。


 「近所の噂になるぞ」


 「だってこうして掴まっていないと、置いていかれて迷子になりそうなんです。私また変な男にナンパされちゃいますよ」


 美月姫の長い髪が風に揺れ、圭介の腕にも触れてくすぐったい。


 「もうすぐ八月も終わりですね」


 夜風の涼しさに、美月姫はうつろいゆく季節に気がついたようだ。


 来週はもう九月。


 「先生は、九月って忙しいんですか?」


 「来月か? ……遠足は十月だし、九月の学校行事も大きなものはないし、あったとしても部活の始動とテストの準備くらいで、あまり忙しくない季節だな」


 今年は担任を受け持っていないので、スケジュールが非常にゆったりしている。


 去年までとは大違いだと圭介は実感した。