四百年の恋

 「大村、」


 「これから先生の部屋に場を変えて飲みません?」


 聞き違いではなかった。


 「俺の部屋は……」


 突然の展開に、圭介はどう対応すべきか一瞬迷った。


 「あ、もしかして部屋に女の人が住んでるとか?」


 「ば、ばか言うな」


 「だったら誰にも迷惑かからないし、二次会は先生の部屋で」


 ……単なる「宅飲み」の提案かもしれない。


 だが現状から推測すると、宅飲みだけでは済まない可能性が高い。


 美月姫は隣で無邪気に笑いながらも……その瞳には誘惑の光がちらついているように見える。


 (誘ってきたのはこいつからだし、お望みのまま成り行きのまま好きにしてやれば)


 悪魔の自分と、


 (後々大変な事態を引き起こすかもしれない。その場の勢いとはいえ、社会的、倫理的にまずいことは、教員として慎むべきだ)


 正義の自分とが圭介の中で戦っている。


 「……近隣の噂になるから、宅飲みはまずいな。どこか別のところで」


 圭介の同じマンションには、階は違えど同僚の教師も住んでいるし、同じ町内に居を構える紅陽学園関係者も多い。


 近所をうろうろするのは、噂を振りまいてほしいと自らアピールしているようなもの……という危険性もあった。