四百年の恋

　｢困ります、私｣


　｢いいじゃん。彼氏いるわけじゃないんだろ？　だったら俺たちと遊びに行こうよ｣


　強引に腕を掴まれた。


　｢せっかくの函館記念なんだし、楽しく過ごそうよ｣


　｢いえ、私は｣


　｢君、可愛いね。助手席に乗りなよ｣


　強引に助手席に押し込まれそうになった。


　運の悪いことに、夕暮れ時の周囲には人影が絶えていた。


　｢変質者に遭遇したら、蹴り上げて相手が動転した隙に逃げればいいんだよ｣


　これまでそんな強気な言葉を友人たちに振りまいていた美月姫だったけど、いざ危機に遭遇してみると、動揺のあまり何もできずにいた。


　｢おい｣


　圭介はハッピーピエロでの買い物を終えて、外へと出て来た時、美月姫が変なチャラ男二人に絡まれているのを発見した。


　｢俺に連れに何をするんだ｣


　ナンパ男に詰め寄り、強い口調で威圧する。


　不用意に手は出さず、無言のまま。


　しばしにらみ合いの末、


　｢ちっ、男がいるんなら最初っから言えよ｣


　かなわないと察したのか、ナンパ男二人組はそそくさと立ち去り、車でそのまま消えていった。


　車が見えなくなったのを確認して、ようやく安堵。