四百年の恋

 「……そろそろ行くか」


 美月姫の熱いまなざしから逃れるかのように、圭介は歩き出した。


 「えっ、もう行くんですか?」


 「五稜郭でタワーにも上りたいって言ってただろ? 七時までだぞ」


 「そうですね……」


 美月姫は大沼の絶景に名残惜しそうにしていたものの、程なくして圭介に続いて歩き始めた。


 駐車場に戻り、キーを受け取って再度ハンドルを握る。


 駐車場から抜け出す際の運転テクニックも、かなり上達した。


 (真姫も運転は得意だったな……。ちょっと乱暴運転だったけど)


 ふと圭介は思い出した。


 そして月光姫もまた、かなり長距離を馬で駆け抜けるようなかなりお転婆なお姫様だったという。


 (つい、比べてしまう)


 美月姫のふとした仕草や言葉。


 何もかもが真姫に似ていて、圭介は戸惑っている。


 突然背後に、暴走車が迫って来た。


 この辺りは一車線道路。


 「ムカつきますね。背後から煽って来ています」


 「対抗せず左側に寄せて、追い越させなさい」


 「はーい」


 圭介が忠告しなかったら、美月姫はむきになって暴走車とカーチェイスしはじめたかもしれない。


 だが美月姫は言われた通りに車を若干左に寄せて少しスピードを落とし、その隙に暴走車は猛然と追い越していった。