四百年の恋

 「そういえば高校時代、先生の授業で月光姫のお話を聞きましたね」


 ちょうど月光姫のことを思い描いていた時にその名を提示されたので、圭介は驚いた。


 「私、以前にこう言いましたよね。月光姫の生き方が理解できないって」


 「ああ、覚えている」


 「今でも理解できないんですよ。後を追うほどに愛を貫くってことが」


 「今でも?」


 「はい。死にたくなるほど追いつめられても、相手がもしもそこまで自分を想ってくれていなかったとしたら、ちょっとむなしいですよね」


 「でも真、いや月光姫は」


 福山冬悟と互いに、深く愛し合っていた。


 それは圭介も、認めざるを得ないところ。


 「相手がどれだけ自分のことを想っているかなんて、目に見えないし分かりません。私だったら家族や友達を捨ててまで、愛を貫くなんて無理です」


 「確かに、それはよっぽどの覚悟が必要だ」


 「それに私だったら。そばにいてくれる人に、次第に気持ちが移ってしまいます」


 「……」


 「見えないものに執着するあまり、目の前の大切なものを見失ってはいけない。この前先生もそう教えてくれましたよね」


 まっすぐに見つめられた。


 純粋で、その奥に情熱を秘めた瞳。


 心を貫かれそうで、圭介はさりげなく目を伏せた。


 美月姫が、自分に対して想いを寄せ始めている。


 密かに期待していたはずなのに、いざそれが現実のものになってしまう予感を感じると圭介は怖かった。