四百年の恋

***


 「先生、何か考えごとですか?」


 横で湖面を眺めていた美月姫が、圭介の顔を覗き込むように訪ねた。


 「ん……。いつ来てもここは、いい眺めだと思って」


 とっさに答えた。


 圭介が考えていたのは、これからの美月姫との関係。


 この日は紅陽学園の、夏休み最後の日曜日。


 約束通り美月姫に車を運転させ、函館近郊の大沼国定公園を訪れていた。


 駒ケ岳の麓の、美しい湖。


 車を停めて、湖のほとりをあちこち歩き回っていた。


 圭介は湖を見つめながらふと考えごとをしていたのだが、その大部分は清水優雅のこと。


 ……先日、優雅の母親に伝言を託し、次の日まで待ってみたのだが、結局優雅からの返信はなかった。


 無視したのか、何とも思っていないのか。


 (それが、あいつの返事だとしたら)


 圭介は決意を固めつつあった。


 「先生は昔の恋人と、ここにも来たことがあるんですか?」


 突然美月姫に訪ねられた。


 「……昔のことだし、もうよく覚えていない」


 嘘だ。


 この地を真姫とも訪れたことがある。


 離れないように、手を繋いで。


 そういえばこの地は、滞在中の福山冬雅の元に、弟である冬悟の謀反の知らせが届けられた、悲しい思い出の地。


 月光姫は愛しい人の無実を信じ、はるか福山城まで馬を走らせたという……。