四百年の恋

***


 「あら先生、いらっしゃいませ」


 入り口まで迎えに出て来たホステスには、すでに顔を覚えられている。


 そして彼女は、圭介の服装を見て怪訝な表情を浮かべる。


 高級キャバレー「夕映霞(ゆうばえかすみ)」に客として訪れるには不似合いな、ラフな格好。


 圭介は美月姫を送り届けてから、この夕映霞に直行していた。


 「客として来たわけじゃない。ママに伝言をし終えたら、すぐに撤収するから」


 ママ、つまり清水の母親の紫は、接客中だった。


 一段落するまで、圭介はカウンターで待たせてもらうことにした。


 義理でウーロン茶一杯を注文。


 なぜかこのような場所では、酒よりウーロン茶のほうが割高で不思議だ。


 (下の自販で買ったほうが全然安いけど、まさか持ち込みってわけにもいかないし)


 「先生、久しぶりですわね」


 義理で注文したウーロン茶を飲んでいるうちに、紫が近づいてきた。


 「今日もウーロンで?」


 「ええ、帰宅途中にちょっと寄っただけですし。車ですので」


 「たまにはお客として、いらっしゃればいいのに」


 「今度同僚と共に伺います」


 「……で、どんな用件で? 慌てて寄るくらいだから、相当お急ぎで?」


 洋装と和装、紫の装束はその日によって異なるが、この日は艶やかな着物を身にまとっていた。