四百年の恋

 今振り返って、そのまま抱きしめれば。


 勢いで唇も重なるかもしれない。


 ……そうなればもう、歯止めが利かなくなる。


 また際限のない過ちの輪の中に落ちていきそう。


 「……さて先生も寒くなってきたな。陽も沈んだし、そろそろ帰ろう」


 振り返って美月姫を離し、そう切り出したのだけど。


 帰りたくなさそうな表情を見せる。


 求めるようにふっくらとした唇も、真姫にそっくり。


 「暗くなると、お化けがでるぞ。寒いし駐車場に戻ろう」


 誘惑のような視線から身を振り解き、背を向けて駐車場に歩き出そうとした。


 美月姫はその後を追ったのだが、圭介のTシャツの端をそっと掴んだ。


 「どうした? 足元が見えにくいか?」


 振り返らずに問いかけた。


 「先生、またドライブに連れて行ってください」


 せがまれた。


 「いいぞ。また運転の指導ついでにこの辺りを……」


 「……もっと遠くがいいです」


 「え?」


 「大沼とか、松前とか……。いや積丹(しゃこたん)や札幌でも」