四百年の恋

 「大村……」


 「ふふ……。先生の背中って暖かい」


 美月姫は両手を添え、頬を圭介の背中に寄せてきた。


 体を寄せる。


 伝わる体温が、微熱から灼熱へと変わりゆく。


 「男の人の背中って、温かくて大きいですね」


 言葉が直接、体内に響いてくる。


 振り向いて抱きしめたい衝動に襲われる。


 (だめだ……。血迷っては)


 圭介は自制していた。


 いくら愛した女に似ていても、ここにいるのは別人。


 しかも元教え子。


 いい年して、未成年相手に血迷うわけにはいかない。


 いくら孤独を抱えた者同士とはいえ。


 「……夕日。早く撮影しないと沈んじゃうぞ」


 この状態から逃れるために、圭介は美月姫に西の空、間もなく沈みゆく夕日を示したのだが、


 「……もういいんです」


 そう答えたきり、背中から離れようとしない。


 周囲にさほど人もいなかったので、しばしそのまま立ち尽くしていた。