「……もう大丈夫。駐車もばっちりです」


 一通り駐車場内を走り回った後、バックで駐車スペースに車を停めた。


 「免許取ってから、一回も運転してなかったので、緊張しました」


 「他の車両がいると、また感覚が違うぞ。周囲のリズムに合わせる必要もある。市街地も走ってみるか?」


 「いいんですか!?」


 美月姫は嬉しそうな表情を見せる。


 この笑顔に圭介は弱い。


 再度車を走らせ、市街地へと向かった。


 「いいか、絶対に制限速度は守れよ。初心者はまずゆっくり走るんだ」


 「了解!」


 美月姫は見る見る、運転に慣れてきた。


 オートマティック車なので、ギアチェンジに気を配る必要もなく、前を見ているだけでいい。


 「歩行者には気をつけろよ。夏休みだから子供が自転車で飛び出してくる可能性もある」


 「はーい」


 真夏の昼下がり。


 暑さを避けてか、思ったより歩行者は見かけられず、美月姫は安心して運転していられた。