四百年の恋

 「先生は今年は、担任持っていないんですよね」


 「ああ。去年一年間、三年一組で頑張ったから、今年は一年生の副担任をまったりやってる」


 ちなみにそのクラスの担任は、大学の同期・初芝静香だ。


 「去年は散々、私たちお手数おかけしましたからね」


 「いやいや。受験を成功させなきゃならないプレッシャーはあったけど、問題起こす奴もほとんどいなかったから、楽させてもらったよ」


 問題を起こす奴。


 要注意人物が約一名存在したが。


 「……」


 その圭介の一言が原因で、二人ともまた清水優雅の存在を再認識してしまった。


 一連の会話を通じても、思い出の節々に優雅の気配が横切っていた。


 忘れられない存在。


 初めての相手。


 さよならの言葉もなしに、一人東京へ去って行った人。


 ……思い出すと美月姫は未だに、胸が痛む。


 でも……もう手の届かない人なのかもしれない。


 父親からの期待、自身の将来、結婚相手の家柄などを鑑みると、美月姫にはどうすることもできない。


 忘れなければいけない。


 美月姫は心に念じる。


 だがそう簡単には割り切れないし、忘れられない。


 「・……!」


 ジャスミンティーのグラスを握る手の力が、無意識に強まる。