四百年の恋

 両腕にバドミントンのシャトルの箱を抱えた圭介が、戸を開けて研究室に入って来ようとしていた。


 一箱にシャトルの筒が、十本入っている。


 そんな箱を三箱抱えているため、圭介は戸を閉めるのに四苦八苦している。


 そこで真姫は席を立ち、圭介が中に入ったのを確認して戸を閉めた。


 「悪いな」


 「吉野くんは、部活終わったところ?」


 私服に着替えているが、直前にシャワーをしてきたようで、髪が濡れている。


 「ああ。シャワーしている際に部室の鍵が閉められていたので、しまう場所がなくて、シャトルを持ってきた」


 「そんなにたくさん、どうするの?」


 「今晩一晩、研究室に置かせてもらおうと思って」


 「研究室は手狭だけど、壁際にでも置いておけばいいんじゃない?」


 「先生たちや大学院生たちは? 一応許可を得ておこうと思うんだけど」


 「先生たちは学会の後に打ち上げで、もう戻って来ないみたい。先輩たちもみんな帰って、私が最後の一人」


 「ふーん……」


 「じゃ、シャトルの箱はこっちに」


 真姫は机の上に置かれたシャトルの一箱を抱え、壁際に移動させようとしたその時。


 突然肩を掴まれた。


 そして、


 「真姫」


 低い声でその名を呼ばれた。