四百年の恋

 「丸山家の権威付けを目論む、丸山乱雪提案の政略結婚だって、みんな話していました。相手が北海道ゆかりの福山家の末裔ともなれば、インパクトも強いし」


 美月姫はそう述べて、小さくため息をついた。


 (清水が、福山家末裔の娘と……)


 圭介はまたしても因縁を感じた。


 周囲にお膳立てされた政略結婚。


 現代という自由恋愛が基本であるこの時代にもかかわらず。


 (清水はこのまま自分の運命を、おとなしく受け入れるのだろうか)


 今はまだ、圭介には分からなかった。


 ふと店の入り口越しに外を眺めると、辺りはすでに薄暗くなってきていた。


 真夏とはいえ、夏至からすでに一ヶ月以上が過ぎ去っているので、日没が早くなってきている。


 「そろそろ出るか。送っていくよ」


 一足遅れの大学合格祝いという名目で、圭介が会計を済ませた。


 「本当にすみません。久しぶりに美味しかったです」


 礼をして美月姫は、圭介に続いて店を出た。


 そこから家までは、車だったらあっという間。


 「あら、美月姫。それに吉野先生じゃないですか、ご無沙汰しております」


 ちょうど家の前で、母親と遭遇した。


 この春から近所の地区センターでパートを始めた母親は、今帰宅したところだった。


 「たまたま駅で会いましたので、家まで送ってきました」


 「本当にありがとうございます。家でお茶でも」


 「いえ、私はここで」


 丁重に礼をして、圭介は帰宅した。