通い始めてみればたちまち馴染むことができて、楽しい大学生活を送ることができている。
つらい思い出など、すっかり封印できるくらいに。
封印。
「先生」
しばしの沈黙の後、美月姫の声は震えていた。
「どうした?」
「清水くんから……、卒業後に連絡ありましたか?」
美月姫はおそるおそる、圭介に訊ねた。
このまま忘れ去ってしまいたかった名前。
しかしどんなに打ち消しても、色褪せることの無かった記憶。
「清水とは……」
美月姫の心情を慮って、圭介は清水優雅の名は口にしないようにしていたが。
先方から言及してきたので、禁句を解禁した。
「全く連絡が取れない。唯一の手段が奴の母親への伝言なんだけど、本当に奴に伝わっているんだか」
「そう……なんですか……」
美月姫も高校時代の友人と、時々行なうメール交信。
現状報告の合間に、優雅の消息を探ってみる。
だけど帰ってくる答えは皆、「音沙汰なし」。
「三年一組」から東大に進学した者は、数名存在する。
だが優雅以外は、皆理系。
なかなかキャンパス内で遭遇する機会はなく、出会ったとしても優雅は笑顔ですり抜けて行くという。
そして学校周辺で、育ちの良さそうな女の子と会っている姿が、時折見かけられると聞く……。
つらい思い出など、すっかり封印できるくらいに。
封印。
「先生」
しばしの沈黙の後、美月姫の声は震えていた。
「どうした?」
「清水くんから……、卒業後に連絡ありましたか?」
美月姫はおそるおそる、圭介に訊ねた。
このまま忘れ去ってしまいたかった名前。
しかしどんなに打ち消しても、色褪せることの無かった記憶。
「清水とは……」
美月姫の心情を慮って、圭介は清水優雅の名は口にしないようにしていたが。
先方から言及してきたので、禁句を解禁した。
「全く連絡が取れない。唯一の手段が奴の母親への伝言なんだけど、本当に奴に伝わっているんだか」
「そう……なんですか……」
美月姫も高校時代の友人と、時々行なうメール交信。
現状報告の合間に、優雅の消息を探ってみる。
だけど帰ってくる答えは皆、「音沙汰なし」。
「三年一組」から東大に進学した者は、数名存在する。
だが優雅以外は、皆理系。
なかなかキャンパス内で遭遇する機会はなく、出会ったとしても優雅は笑顔ですり抜けて行くという。
そして学校周辺で、育ちの良さそうな女の子と会っている姿が、時折見かけられると聞く……。



