そして紫は美月姫に、吐き捨てるようにこう告げた。


 「あなたも優雅の将来を思うのなら、身を引きなさい」


 続いて突然、身の上話を始めた。


 「……貧しい漁村の生まれだった私は、家族の負担を減らすために、高校を中退して函館に出てきたわ。苦労してホステスとしての地位を築きつつあった頃、丸山に囲われるようになったの」


 「ご苦労……なさったのですね」


 美月姫の相槌も聞こえていないようで、紫は大きく煙を吐き出し話を続けた。


 「優雅が生まれた時、男の子がいなかった丸山は喜んでくれたわね。優雅が稀に見る天才児と知って、ますます大喜び。この子こそ、やがては自身の後継者に相応しいって」


 「……」


 「間違いなく私が生んだ、見た目は私にそっくりな子なのに。どうして頭の出来があんなにすごい子になったのか、私が一番驚いているわ」


 紫のモノローグは続く。


 時折煙草の煙を吐き出しながら。


 「いずれにしても、あの子には丸山の後継者としての輝かしい未来が待っているのよ。誰にも止めさせないわ」


 そう言い切る紫の視線は、真剣だった。