「あなた……あの子の何なの?」


 紫は怪訝な表情で美月姫を見据えた。


 「え……。私は清水くんと、同じクラスの」


 「……そういえばあなたと入れ違いに、担任だった吉野先生もこの店を訪ねてきたわよ。エレベーターの辺りで会わなかった?」


 美月姫は首を横に振った。


 (吉野先生も……。清水くんのことを心配して、ここまで来たんだ)


 「担任ならまだ分かるわ。でもあなたは何? 本当にただの同級生なの?」


 「……と言いますと?」


 「あなたの表情、とてもただの同級生には見えないわね。優雅と付き合ってたの?」


 「え……」


 「もしかして、あの子にもう体を許したの?」


 「……」


 とっさにごまかすこともできず、認めるわけにもいかず、美月姫は黙り込んでしまった。


 「……まあいいわ。いずれにしても、あなたには優雅と結ばれる運命ではないのは確かなんだから」


 紫は再び、煙草に火をつけた。


 「……どういうことですか?」


 「聞いていないの? 優雅はやがて、父親である丸山乱雪の後を継いで国政の舞台に羽ばたく運命なのよ。その障害となるような色恋沙汰は、許されるはずがないわ」