「いってらっしゃい」
「ありがとう、お母さん。もし遅くなりそうなら、連絡するから」
美月姫は母親の運転する車で、会場前まで送ってもらった。
週末の中心街は、行き交う人の波に飲み込まれてしまいそうになる。
「……」
店に入る前に、一呼吸。
緊張を押し殺すかのように。
静かに美月姫は、勝負に出る覚悟を決めていた。
優雅に会えるのも、今日を最後にしばらく機会がないかもしれない。
後から悔やみたくなかった。
どんなに術なく拒絶されるにしても、白黒はっきりさせておきたかった。
……優雅が東京に旅立つ前に、打ち明けておきたかった。
今の自分自身の想いを。
……。
「ほんと、大村さんってこんなに綺麗だったんだね。もっと早くに判っていたらアタックしたのに」
隣の席に来た男子が絡んでくる。
複数の男子生徒に入れ替わり立ち代わり誉められた美月姫は、笑顔で応対していた。
どんなに迫られても、今日を限りにもう会えないかもしれない相手なので、美月姫は社交辞令で受け答えをくり返した。
「美月姫、せっかく素材がいいんだから、もっとおしゃれしろってずっと言ってたのに、今さらだもんね」
女友達も言う。
今まで学校の友達には見せたことのないような、鮮やかな色合いの装束。
髪は垂らし、眼鏡も外している。
いつもとはまるで印象の違う美月姫を、クラスの面々は賞賛していた。
「ありがとう、お母さん。もし遅くなりそうなら、連絡するから」
美月姫は母親の運転する車で、会場前まで送ってもらった。
週末の中心街は、行き交う人の波に飲み込まれてしまいそうになる。
「……」
店に入る前に、一呼吸。
緊張を押し殺すかのように。
静かに美月姫は、勝負に出る覚悟を決めていた。
優雅に会えるのも、今日を最後にしばらく機会がないかもしれない。
後から悔やみたくなかった。
どんなに術なく拒絶されるにしても、白黒はっきりさせておきたかった。
……優雅が東京に旅立つ前に、打ち明けておきたかった。
今の自分自身の想いを。
……。
「ほんと、大村さんってこんなに綺麗だったんだね。もっと早くに判っていたらアタックしたのに」
隣の席に来た男子が絡んでくる。
複数の男子生徒に入れ替わり立ち代わり誉められた美月姫は、笑顔で応対していた。
どんなに迫られても、今日を限りにもう会えないかもしれない相手なので、美月姫は社交辞令で受け答えをくり返した。
「美月姫、せっかく素材がいいんだから、もっとおしゃれしろってずっと言ってたのに、今さらだもんね」
女友達も言う。
今まで学校の友達には見せたことのないような、鮮やかな色合いの装束。
髪は垂らし、眼鏡も外している。
いつもとはまるで印象の違う美月姫を、クラスの面々は賞賛していた。



