四百年の恋

 「……私が受験生だった頃は、大学に掲示される合格者一覧を直接見に行ったものよ。でも私は怖くて行けなくて。たまりかねた親戚の叔母さんが代わりに見て来てくれたの」


 親戚や知人たちから続々かかってくる、合格おめでとう電話やメール。


 それらに対応しながら、母は美月姫に語りかけた。


 「今は個人情報保護法などがあるから、公衆の面前で個人名を出すのってできなくなったのよね。でもメールやネットで合否をチェックできるし、楽になったわよね」


 そう言って母は、美月姫の受験生番号が記載された合格者一覧画面をプリントアウトしていた。


 美月姫はわざわざ札幌のキャンパスまで出向かずとも、インターネットの合格者番号一覧のページで自らの合格を確認できたのだった。


 「今晩の謝恩会、五千円で足りるの?」


 「会費は三千円なんだけど」


 「急な入り用とかあるかもしれないから、千円札で五枚持って行きなさい」


 美月姫はまだ、親からお小遣いをもらっている身分。


 毎月のお小遣いでは負担が重いので、合格祝いに母が五千円用意してくれた。