四百年の恋

***


 「清水くん」


 玄関から校門へと続く、吹雪の道。


 卒業式だというのに、吹き荒れるのは桜ではなく雪。


 春の嵐に見舞われている、卒業式の帰り道。


 美月姫は帰路につく優雅を呼び止めた。


 「何?」


 優雅はゆっくりと振り返った。


 表情に変化はない。


 「ちょっと話があるんだけど」


 「どんな話?」


 「……ここじゃちょっとまずいから、改めて時間を作れないかな?」


 「いつがいい?」


 「帰宅後でも、明日でもいいんだけど」


 「大村さん、まだ受験残ってるんでしょ? 終わってからのほうがいいんじゃない?」


 優雅も後期日程の試験は残っているのだけど、前期で合格確実なので、もう受験勉強は打ち切っているらしい。


 「そうかも……。私は後期日程受験濃厚だから」


 「合格発表後、謝恩会が開かれるよね。その時でどう?」


 「……了解」


 「じゃ、その時改めて」


 そう言い残して。


 優雅は吹雪の中に消えていった。